思考の整理学を読んでみて

   グライダーと飛行機

 グライダーと飛行機の違いはエンジンが有るか無いか。人間でいうと受動的に知識を得るか、自力で物事を発見・発明すること。この2つは生きていく上で欠かせないものだが、実際にはグライダー能力が圧倒的で飛行機能力はまるでないという”優秀な”人間であふれている。そもそも学校がグライダー人間養成施設なってしまっており、みんなと足並みを揃え、断片的でも知識を蓄えられれば優秀と見なされる。しかし、コンピュータの登場によりグライダー人間の立場が取って代わられてしまうことになるだろう。エンジンを積んだグライダーとなるためにはーーー

 「醗酵」「触媒」「エディターシップ」

 思考を組み立てる際には、なやんでてもしょうがない。ふとした瞬間に求めていたものが降りてくることもある。無から有を生ずる思考などそう簡単に出てくるものではない。寝かせてみたり、全く別のものがきっかけとなって新しい思考が結合されることもある。結合するときにはそれぞれが周知、陳腐なものでかまわない。そういうありふれた素材と素材が組み合わさって新たな思考を生む。

 「発想の面白さは、化合物の面白さである。元素を生み出すのではない」

 「情報のメタ化」

 私たちが考える断片的な一つ一つの発想は一時的情報であり、それらを「醗酵」、「エディターシップ」、「アナロジー」等の方法を用いて二次的情報へ昇華させる。思考の整理とは、単なる思いつきをメタ化し、より高い抽象性へ高める質的変化のことだ。思考の純化とも言い換える。

 「忘れる努力が求められる」

 人間、興味・関心があることは忘れない。つまり忘れるとは、価値を区別し、判断、自分の価値観によってふるいにかけること。

 うまく忘れるためには、頭の中に古典を作り上げる。時間が立つにつれ、古典は細部が欠落して新しい性格を帯びるようになる。これを頭の中で促進させる。それには、知識のメタ化を図る。一次的情報を二次的、三次的へと昇華させていく過程で、いらないものを振り落としていく。

 考えをまとめるには、とにかく書いてみる、友人と話してみる、専門の垣根をとりはらい、異質なもを取り入れる。

 二次的現実(本や映像)による知識は都合よくまとまりを持ってくれている。二次的現実が一次的現実のようになってしまっている。これにより人が考えることは抽象的で活力が無い。生の生活で考えたことを整理し、新しい世界を作る。汗のにおいのする思考をしないと。。

 

 

要約はここまで

本書では、「思考の整理」、「思考のシステム化」というワードが頻繁に出てくる。Ⅵを読んでみると、”私たちは一次的現実(=ナマの生活)に根を下ろし、新しいシステム(=価値観)を構築していかなければならない。”というように読める。そのための忘却、情報のメタ化であるのだろう。その価値観をもとに一次的現実を自分なりに整理していかなければならないのだろう。

 

おわり